「東西問題」から「南北問題」へ。桜出版は文化・文芸のパラダイムシフトを提言します。

桜出版

渾身の思いを詠む─五行歌・平和へのメッセージ
  • <第4回> 高樹郷子さん (サンデー毎日2007年8月19-26日合併号/同9月16日号/同9月23日号に掲載)
  • 終戦を聞いた 五歳の青空は それからの 六十年分の青空より 青い (「人を殺せとをしへしや」上巻162Pから)
  • ●「まこと」を詠み続ける

     8月15日の昼、大人たちは皆、ラジオを聴きながら泣いていました。私は「もう飛行機はこないよ。安心していいんだよ」という母の言葉を聞いて、心から嬉しさが込み上げるのを抑えることができませんでした。歌に詠んだ青空は、そのとき身を寄せていた母の実家の淡路島で見た、8月15日の青空です。

     5歳のとき、私は西宮で2度空襲に遭いました。1度目は自宅が焼け、借家に住んでいた2度目の空襲では逃げた防空壕の中を炎が走り、背中に火がついて、もう死ぬかと思いました。母が必死で炎を手で叩き消してくれ助かりましたが、あの時の光景は今も生々しくはっきりと思い出されます。

     翌年、私は小学校に入学しましたが、軍国教育を1度も受けることなく戦争体験を記憶している唯一の世代といえるかもしれません。そのため、少し上の兄や姉とも、戦争を知らない世代とも「戦争」に対する意識は違うのではないかと思うのです。

    「まことの心をまことの声に出すよりほかに歌のよみかた心えず」と与謝野晶子は言いました。私も軍国教育を知らず戦争を知る唯一の世代として、その「心のまこと」を詠み伝えていきたいと思っています。

  • 高樹郷子さん
  • 高樹郷子さんのプロフィール

    焼夷弾の降る音、火の海、5歳で受けた空襲の記憶が、かくも鮮明で、自分の一生を支配するというのは本当だろうか、と自分でも驚く。多分、かの戦争を証言できる最後の年齢であること、だからこそ表現しておきたかったが、悲惨さに比して、短歌では流麗に過ぎるもどかしさがあった。五行歌に出会ったことで、このかたちこそより思いが直截に伝えられると思った。戦争を知らない世代にこそ戦争の現実を知っていただきたい。

  • <第1回> 叶 静游さん 詳細はこちら
  • <第2回> 高橋美代子さん 詳細はこちら
  • <第3回> 紫 草子さん 詳細はこちら
  • <第5回> 屋代陽子さん 詳細はこちら
Copyright(c) Sakura publishing.