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桜出版

渾身の思いを詠む─五行歌・平和へのメッセージ
  • <第2回> 高橋美代子さん (サンデー毎日2007年8月5日号/同9月16日号/同9月23日号に掲載)
  • めくるめく 渇きの中で カンナ燃える 今年も 敗戦記念日が来る (「人を殺せとをしへしや」上巻278Pから)
  • ●敗戦という分水嶺

     水はみな同じ水。水に変わりはありません。しかし、その水は分水嶺によって右と左とに分かれます。私は、人の生き方もそのようなものではないかと考えています。

     敗戦は、日本にとって大きな分水嶺ではなかったかと思っています。灯火管制や食糧難もなくなり、日本人はいま平和を謳歌していますが、敗戦の前も後も、日本人は同じ日本人。片方から片方にどっと流れが変わり、失ってしまったものはないのでしょうか。

     カンナという花を私はあまり好きではありません。しかし、五歳のときから千人針を刺し、七歳の八月に敗戦を迎えた私の戦争への思いは、カンナや夾竹桃と重なり、いまも心にずっと引きずっています。

     戦いはいつの世も、人の心に大きな憎しみと悲哀を残します。壬申の乱では、日本人同士が親子兄弟、敵味方に分かれ血で血を洗う戦をしました。古代には惟喬親王や有間皇子など、皇位後継者と目されながら謀略に敗れた人が大勢います。私は、この方たちのように頂点に立てなかったけれども歌を遺せた人が好きです。

     どのように時代が変わろうとも、人はみな同じ。人の心に残る歌とはなにか、古典に学びながらいつも考えています。

  • 高橋美代子さん
  • 高橋美代子さんプロフィール

    愛媛県四国中央市在住。1938年生まれ。寅年の女として幼い日に戦地へ赴く兵隊さんに、弾丸除けの千人針の奉仕ができたことを誇りに思っている。7歳の時、終戦。あの戦いは、一体何だったのだろう。失ったものの大きかった戦い。幼い心に刻んだ戦中、戦後を「幻影」のタイトルで17首詠んだ。収めきれない平和とは、民主主義とは、戦後60余年を経てもなお問い続けている。

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